印刷の現場見学へ行きました
先日、学校のデザイン科の生徒を連れ立って、某印刷会社の現場を見学に行きました。自身の経験も踏まえて、以前から「※百聞は一見にしかず」と思っておりまして、生徒たちの見聞を深める意味も込めて、実現に奔走(奔走してたのは学校サイドですがw)しておりましたが、ようやく現実のものとなりました。
※以下用語は簡単に解説しますが詳しくはググって検索してください
デザイナーやオペレーターに代表される広告業界全般の方々でも、なかなか印刷の現場まで足を踏み入れた事のある方は少ないようです。他のデザイン系の専門学校や大学でもあまりないようで、実際お邪魔した印刷会社でも小学生向けの見学コースしか準備していないとの事で、準備に苦慮されておりました。
私自身も印刷の現場へ訪れたのは3年近く前の事なので、最新の※CTP(コンピューター・トゥ・プレート)も含めた現場の様子を勉強できるとあって、新鮮な気持ちで訪れることができました。実際、「百聞は一見にしかず」とは伊達にある言葉じゃないなと再確認させられました。
まずは簡単な印刷のウンチクがあってから2チームに別れ、我がチームは枚葉機→輪転機→製版・刷版の順路で見学いたしました。
さて※枚葉機に関してですが、さすがに最新型(?)なだけあって、ほとんどのコントロールがコンピューター制御で、昔のような「職人の仕事」的なニオイはほとんど無くなっていました。思わぬ所で「目からウロコ」だったのが刷るインクの順番で、「スミのせ」なんて指定をするので黒が一番最後だと思ってましたが、実際は濃い色から黒→シアン→マゼンタ→イエローと刷っていくという事が判明いたしました。どうも明るい色は最後に持ってこないと輝度が落ちてしまう?とかそんな理由があるらしいです。
次に※輪転機ですが、コチラも完全にコンピューター制御。何より驚いたのが刷り上りの検査も自動化されているという事で、実際に回っている印刷機に意図的に印刷ミスを発生させていただいたのですが、どの枚数の部分で、どの箇所に、どんなミスが発生したかも表示してくれます。イラレなんかの元データと印刷物のスキャン(?)画像を比較検証して、ミスがあるとアラートが鳴る仕組みのようです。実物のコンソール画面を見ると、かなり詳細な部分まで検知するようでした。
製版・刷版の部分ではコレといって目新しいものは無かったwような気がしますが、予想以上にCTPが主流になって来ていたというのが判明いたしました。まあコストも時間も節約になるとなれば、従来のフィルム製版→刷版という流れは徐々に無くなっていくのも時代のニーズという事でいたしかたないのでしょう。逆にCTPを導入していない印刷会社なんかは、今後の市場競争で置いてけぼりを食らう可能性があると思われます。約10年前の写植屋さんが崩壊した「※MACショック」の二の舞というのは避けて欲しいものです。「※第2次MACショック」でしょうか?
最後に質問タイムがあったので、生徒に負けじとかねてより疑問に思っていたこの質問をぶつけてみました。
「今後の印刷において、MACとWINどちらが主流なのか?MACならOSXとイラレ10以降は使えるのか?」
答えは...正直な所今後の事は誰にもわからないという事でした。その時その時のメインストリームに乗っかるのは当然で、ニーズがあれば「できない」というのは仕事上言えないですし、全般的に対応して行くというお話しでした。なるほど、やはりドコでも悩んでいる難しい問題だったんですね。
総じて印刷会社の見学は非常に有意義な時間を過ごせたと思います。印刷会社の営業マンの方とお話しをする事はあっても、なかなか現場まで足を踏み入れる時は少ないものなので、デザイナーに限らず広告代理店の方なんかも是非見学に行かれることをオススメいたします。知らないで仕事してる方が意外に多いこの業界ですから...。
※百聞は一見にしかず
最近はことわざ知らない学生もおりますので念のため。100回話しを聞く事よりも、1回自分の目で見る方が分かりやすく、理解度が深まる。何度繰り返し聞いても、一度実際に見ることに及ばない、ということわざです。
※CTP(コンピューター・トゥ・プレート)
Computer To Plateの略で、フィルムからPS版に焼き付けるという従来の作業から変わって、コンピューターからプレートセッターという製版機器を通して直接刷版を作成(ダイレクト刷版)する仕組みの事。高額なフィルム代がある程度節約する事ができ、網点の太りやかすれが減少し、5%以下の網点も表現が可能です。つまり、より高精度の版の作成が可能という利点もある。ただし制作された製版は大量の枚数や長時間保存には向かないらしいので、増刷の多い物件では利点は少ないかもしれません。
※枚葉機
最も一般的な印刷方法である、オフセット印刷で用いられている紙送り(?)方式で、四六判などの大きな紙を1面づつ印刷していくタイプ。ロットが10万枚以下の場合(と聞きますが、会社によって違うと思います)や、比較的精度を求める時に使われます。
※輪転機
いわゆるオフセット輪転機というタイプのもので、みんな「オフリン、オフリン」と呼んでいます。紙が巨大なロール状になっていて、新聞の折込チラシといったロットが10万枚以上などの大量に印刷するのに向いています。紙の端がギザギザになって、小さな穴が開いている場合は間違いなくオフリンです。
※MACショック
スミマセン、勝手に名前を付けてしまいました。1995年前後は日本(仙台?)の印刷業界でMACが広がりつつあった時期で、タタミ2畳くらいある巨大なワープロみたいな機械で、文字の打ち出しを専門でする「写植屋」がまだいらっしゃいました。1行あたり1500円くらいでしたでしょうか?
しかしMACのおかげで文字の打ち出しするのにお金を払う客がいなくなり、1台ウン百万〜ウン千万もする機械を導入(または5〜10年リース)してしまった写植屋さんは「MACの書体なんて汚くて誰も使わないよ」と信じながら、時流の波に乗り切れずにバタバタと倒産した事件?です。
「ゴナってイイよね〜」と言ってる人はこの時期の人間でしょう。マチガイない!
確かに文字の形なんかも良くてクオリティ高かったけど、そこまでこだわるクライアントも広告代理店も居なかったんです。もうバブルなんてとっくに終わってたんだから、クオリティよりコスト重視でした。
※第2次MACショック
これまた勝手にスミマセン。でも誰しもが予想していると思います。「MAC」と言いながらMACは関係ありませんが、CTPがメインストリームになる事で、製版という作業そのものが無くなる恐れがあります。実はこれはこれで専門に営業している「製版屋」がおりまして、同じように1台ウン百万〜ウン千万もする機械を導入(または5〜10年リース)してしまった製版屋さんが「CTPってなんですか?」と典型的なデジタルディバイドに陥ってしまうという話しです。
しかし伝え聞く所によりますと、さすがに二の鉄は踏まないとばかりに、身軽に転身されてる方が多いようです。多くは印刷会社化を目指しているようなので、印刷会社同士の競争がより混迷を極めるのは必至でしょう。